アスペルガー症候群の夫を持つ妻に起こる精神の不調のことを「カサンドラ症候群」と呼びます。アスペルガー症候群には、積極奇異型・受動型・孤立型の三タイプがありますが、積極奇異型で軽度だと結婚できることも多いです。そして、結婚後、妻が「カサンドラ症候群」になっていくのです。
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アスペルガー症候群は社会性の障害がある
アスペルガー症候群は、相手の声や表情から相手の感情を読み取るのが苦手です。そのため、夫婦となっても、交互に対話できず、一人で一方的にしゃべる傾向があります。これが妻にとって精神的に負担となります。また、アスペルガー症候群は、自分の視点だけが正しいと思い、それ以外の視点で考えることができないため夫婦喧嘩が増える傾向があります。夫婦となれば互いに助け合いが不可欠ですが、他人に対する関心が極度に乏しい夫を持てば、妻は精神的に疲弊していきます。ところが妻がメンタルを不安定にしたとしても、アスペルガー症候群の夫は、相手の気持ちや考えを接するのが苦手なので適切な対応もできないのです。
アスペルガー症候群のコミュニケーションの障害
アスペルガー症候群の人は、言語能力は優れているのにコミュニケーションが苦手なため、自分の主張を一方的にしゃべり続けます。アスペルガー症候群の場合、自閉症のように言葉の発達が遅れ、抽象的表現が理解できないということではなく、むしろ言葉の発達は問題ありません。ところがコミュニケーションが上手にできないので、例えば、ユーモアや冗談が通じないし、唐突に文脈に無関係な発言をするので自然な対話になりません。それが妻にとっての精神的苦痛となって「カサンドラ症候群」となっていくのです。
『カサンドラ症候群』岡田尊司(角川新書)
アスペルガー症候群の反復行動と狭い興味
アスペルガー症候群の同じであることを求めるという特質は、夫婦のコミュニケーションにおいても、同じ行動を反復するという行動として現れます。並外れた記憶力を持つことと、取りつかれたように狭い領域に興味を示す一方、関心のないことには無頓着なので、夫婦の共通の趣味なども育ちにくい傾向があります。そして、アスペルガータイプは、ストレスに弱く、不安障害、適応障害、うつ、強迫性障害などを合併しやすいので、そのしわ寄せが妻にも及ぶことになります。アスペルガー症候群の診断基準をきちんと満たす人は人口の0.5パーセントしかいないのです。そして、それよりはるかに多いのは、何か一項目だけあてはまるような人で、「特定不能の広範性発達障害」と診断され、人口のかなりの割合で存在するため、「カサンドラ症候群」はありふれているのです。アスペルガー症候群を含めたASD(自閉症スペクトラム障害)という概念で考えることが大切です。