アスペルガー症候群を正しく理解するには

アスペルガー症候群とは、ハンス・アスペルガーというオーストリアの小児科医がその名称の由来です。第一次大戦後の混乱した社会の中で、様々な境遇の子供達を診療したアスペルガー医師は、奇妙な一群の子供達の存在を見出します。これがアスペルガー症候群の概念の出発点でした。それと時を同じくしてアメリカでは精神科医のレオン・カナーが自閉症という概念を提唱しました。

目次

アスペルガー症候群の誕生

アスペルガー症候群という名称を初めて使用したのは、ローナ・ウイングであり、自閉症スペクトラムという考え方もこの社会神経医学者の発想でした。ローナ・ウイングはアスペルガー症候群の典型的なものは三つのタイプに分けられるとしています。それは積極奇異型、受動型、孤立型の三つのタイプです。積極奇異型はもっとも典型的なアスペルガー症候群だといわれており、社会的活動には積極的だが、相手と交互にコミュニケーションをとることができず、一方的に自分の興味のあることをしゃべり続けるという傾向があり、このために周囲との関係性を築くのが難しくなります。会話のキャッチボールができないのが特徴で、何気ない会話などが苦手です。しゃべりだすと、とまらず、こちらが何か言おうとしてもなかなか言わせてもらえないため、嫌われることもしばしばです。ユニークな子供と言われ、成長するとやがて自覚をもって抑えることもできるようになります。自分の好きなことを研究するのは得意で高学歴な職業に就くことも多いタイプです。

受動型と孤立型のアスペルガー症候群

受動型は、自分から社会とかかわろうとすることがなく、受け身であることが特徴です。ただし、周囲に無関心というわけでもなく、会話も交友も誘われるとできるのですが、必要がない限り自分からは関わろうとしない特徴があります。受け身なので仕事なども言われるままに抱え込むことがあります。感覚が過敏で音や匂いを気にして、人目を避けることもあります。孤立型は、周囲への関心がなく、そっけない反応ばかりするのでいつまでも友達ができず、孤立的に生活していくタイプです。どのタイプも対人関係が不器用で、相互的な関係を作るのが苦手です。そして強いこだわりを持ち、鉄道や歴史や数学、ガンプラ、あるいは昆虫などにのめりこんだりします。職業においても研究職や開発職などで大きな業績を発揮したりします。偉大な芸術家などになることも多いです。先端科学やIT産業などで成功する人の中にアスペルガー症候群の占める割合が高いこともわかっています。学者や法律家や医師や芸術家など人類の文化の発展のために貢献する人材となることも非常に多いということです。この本で詳しく理解できます。


アスペルガー症候群

アスペルガー症候群の三つの大きな症状

アスペルガー症候群の症状として大きく三つあります。第一に、社会性の障害。第二に、コミュニケーションの障害、第三に、限局性の興味や反復性の行動。この三つが共通している症状なのです。社会性の障害というのは、他の人といっしょにいても、たった一人でいるかのようにふるまってしまう状態です。これは相互応答性の障害によって生じると考えられています。いわゆる「インタラクティブ」なコミュニケーションが苦手ということです。そのため不自然なアイコンタクトをしたり、相手の表情から気持ちを読み取ることができなかったり、他者の気持ちや考えを察することができなかったり、自分の視点だけが正しいと思い込んでしまうことになります。その結果として、一人でいることを好んだり、他人への関心が乏しくなったりするということです。

アスペルガー症候群のコミュニケーション障害

アスペルガー症候群の場合、言語的な発達は遅れません。ここが自閉症との違いです。つまり言語能力が正常なのに、コミュニケーションが下手というのがアスペルガー症候群の特徴なのです。アスペルガー症候群の子供は二歳までに単語をしゃべり始め、三歳までには二語文は話せるようになります。そうならない場合は、高機能自閉症であることがあります。アスペルガー症候群の人は文字どおりに言葉を受け取り、ユーモアや冗談は通じません。これが人間関係を微妙なものにします。また対話の際に、それまでの文脈とまるで関係ないことを言い出し、話の腰が折れます。コミュニケーションが一方通行になるのです。アスペルガー症候群では、話したり書いたりする能力は高いが、相手の言葉を聞き取り、理解する能力が低いという特徴があります。また、難しいことはよく知っているが、日常の会話は苦手、ということが多いです。専門的な話はいくらでもできるのに、何気ない会話が下手なのです。

反復的な行動や狭い関心で一つの事にこだわる

三つ目の特徴が同一行動の繰り返しです。同じパターンの繰り返しにこだわるのです。幼児で、手をひらひらさせる、ぐるぐる回る、などがよく見られます。注意の転導性が低いため、一つのことにとらわれやすい固執性を持っています。そして、並外れた記憶力があり、分類や整理を好み、非常に狭い領域に関心が集中していきます。ルールや決まりにこだわるのも特徴で、まわりの人にも同じようにルールに従うよう求めることが多いです。仕切ったり、押し付けたりするため、嫌われたりします。これは物事をシステム化する才能としてプラスに発揮されて新しいシステムの開発につながることも多いです。また人よりも物への関心が強い傾向があります。法律、科学、コンピュータ、音楽などさまざまな分野で才能を発揮している人もいます。音や匂いなどの感覚が過敏なことが多いです。ゲームやネットに依存しやすい傾向もあります。

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