自閉症スペクトラム障害と広汎性発達障害は、ほとんど同じ概念と考えてよいもので、その中にアスペルガー症候群も含まれています。対人関係を構築するのが苦手なので、友達ができず、社会生活に溶け込むのが苦手なので引きこもりになってしまうこともあります。
目次
自閉症スペクトラム障害と引きこもり
自閉症スペクトラム障害の人は二次障害として、うつ病になることもしばしばみられます。学校や会社の人間関係がうまくいかず、うつ状態になって、精神科を受診して診断されるケースも多いです。精神科ではどうしても表面にある症状に医師の目も向きますので、うつ病の治療が優先されます。うつ病は、認知行動療法で治すべきですが、最初は投薬されることが多いです。うつ病は、かかりはじめの半年が危険なので、この時期は、休養をさせるように指導します。というのは、自殺の危険を低くするには、まずは休養が大切だからです。しかし、その時期が過ぎて、今度は回復のためのリハビリの段階になると事情は変わってきます。つまり、少しずつ無理をさせる段階に入るのです。この時期は、認知の歪みを修正しながら、少しずつ社会復帰をさせないといけません。ここで失敗すると、そのまま引きこもりになってしまうこともあります。
認知のゆがみを抱える自閉症スペクトラム障害
うつ病の背景となった認知の歪みを修正しないままだと社会復帰したあとで再発するリスクが高まります。そこで、認知の歪みを修正する認知行動療法などのカウンセリングが重要なのです。ところが、自閉症スペクトラム障害あるいは広汎性発達障害の人は、コミュニケーションの障害、対人関係の構築の障害、想像性のズレという脳機能の問題を抱えているので、認知行動療法が効果を発揮しないことが多いのです。まずは、発達障害の傾向があることを指摘し、本人が自覚していくことが重要です。病識を持つことが重要です。患者によっては現実をなかなか受け入れず、治療が進まないこともあります。引きこもりになってしまうこともあり、注意を要するのです。
自閉症スペクトラム障害について患者が自覚を持てば改善しうる
発達障害とはいかなるものかを理解し、どうしてコミュニケーションの障害が起こるのか、対人関係がどうしてうまくいかないのか、どんな想像性のズレがあるのかをひとつひとつ理解させていく働きかけが大切になります。それを行いつつ、少しずつ今度は頑張らせる段階に入ります。この時期に「うつ病は励ましたらいけない」などと言って、リハビリを怠ると、そのまま「引きこもり」になったり、認知の歪みが固定化されたまま、いつまでも治らず、服薬治療が長期化してしまうのです。日本では多くの患者がこの状態になっています。自信を無くして自宅に引きこもり、社会復帰できないまま年齢を重ねるケースも多く、初期段階でそれを食い止めることが大変重要です。学校や会社などのコミュニティにおいて、周囲の人の啓蒙も必要です。社会全体の問題として理解をもって見守ることで独自の長所を活かしてよい仕事をするケースも多いのです。