自閉スペクトラム症の過敏性(HSP)

過敏性あるいはHSPという概念が知られるようになりました。発達障害の人は過敏性があることが非常に多いです。過敏性は健常な人でも睡眠不足や二日酔いや過労、強いストレスによって出現することのある症状です。自閉スペクトラム症つまり発達障害の人は、感覚過敏や神経過敏を持っていることが多く、それも早い段階で気づかれるサインです。

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感覚過敏や神経過敏と自閉スペクトラム症

発達障害の場合、コミュニケーションの問題や社会性の問題は、小学生あるいは中学生ぐらいから周囲に問題視されるようになることが多いですが、HSPつまり感覚過敏や神経過敏に関しては、一歳ぐらいにはすでに認められるのです。愛着障害による感覚過敏との区別は大切ですが、そのためには成育歴、生活環境を詳しく調べることも必要です。統合失調症でも感覚過敏は発現します。また、他者からの評価や承認に関して過敏になりすぎる適応障害や不安障害、パーソナリティ障害などの疾患です。これらとの区別は大切ですが、その鑑別には専門医の手助けが必要なことも多いでしょう。

話の聞き取りが苦手でコミュニケーションがうまくできない

自閉スペクトラム症では、対人関係や対話などにおける共感や相互の応酬などが困難です。感覚の過敏や鈍麻があることが多いです。特定の話題やテーマへの執着や同じ行動様式の繰り返しなどがみられます。このような症状の中で感覚過敏は早期から見られ、重要な兆候とされています。感覚が過敏であるゆえに、他者との接触を避けようとします。また、会話で「人の話を聞いていない」としばしば指摘されるように、話の聞き取りが苦手という特徴があります。自閉スペクトラム症に共通するのは、感覚過敏も含めた感覚処理の障害だということです。自閉スペクトラム症の特徴として「心の理論」の発達が遅いことがあげられています。「心の理論」とは、相手の立場に立って、その気持ちを推測する能力のことを指しています。健常者の場合は、四歳にもなると、自分の視点と他者の視点を区別できる能力が育ってくるのに対して、自閉スペクトラム症の人では、八歳を超えてようやくその能力が出てきます。

感覚処理障害が感覚過敏や協調運動の障害につながる

このような発達の遅れの原因は、相手の動きを見て同じ動きができるという「ミラーニューロン」の仕組みが、発達障害の場合はうまく働いていないことにあるようです。また、自閉スペクトラム症の人は男性ホルモンの濃度が高いことが知られています。男性ホルモンの作用で男性的な脳機能つまり論理的で、情緒のない面が活性化していくようです。このことはコミュニケーションが不得手であることの理由であるかもしれません。HSPをもたらす感覚過敏は、神経発達の過程で、発達の不均衡が生じたことによると考えられています。その結果、感覚処理障害が起こり、さまざまな感覚過敏が起こってきます。感覚過敏や協調運動の障害などは、感覚処理障害の一種であるということです。

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