発達障害(ADHDや自閉スペクトラム症)の遺伝と環境の要因とは?

発達障害には、遺伝的リスク要因と環境的リスク要因があることがわかっています。発達障害に関係する遺伝子とその変異もすでにたくさん発見されています。たとえば、ある研究データでは、ADHDの遺伝率は約80%であるといわれています。この数字は、背の高さの遺伝や知能指数の遺伝とほとんど同じ比率です。これに対して、ある研究データで、自閉スペクトラム症の遺伝率が約50%です。この50%というのは、体重の遺伝率とほとんど同じ比率です。こうした遺伝率に関してはさまざまな研究データが発表されていて、微妙に数値に差異があります。

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遺伝と環境の相互作用で発達障害は発生する

いずれにしても、発達障害には、遺伝的リスク要因と環境的リスク要因の相互作用があるということであり、遺伝ですべて決まるものではなく、むしろ、環境的な要因を調整することで、いかようにも予防や改善ができるものと考えるのが適切といえるでしょう。一例をあげるなら、タバコは、ADHDの子供が生まれてくる環境的リスク要因の代表ですが、遺伝的リスク要因のない母親であっても妊娠中に喫煙をしている場合、ADHDの子供が生まれやすくなることがわかっています。そして、その割合は、ADHDの遺伝的リスク要因がある母親が妊娠したとき、妊娠中にタバコを吸わなければ、子供がADHDになる確率とほぼ同じなのです。遺伝的リスク要因がある女性が妊娠中にタバコを吸うことで、ADHDの子が生まれてくる確立は三倍以上に増加するともいわれています。また、純粋に環境要因だけで発達障害になることもあるということがわかっています。

発達障害の環境要因は努力しだいで避けることが可能

母親が有機リン系の農薬やネオニコチノイド系の農薬を野菜や果物から大量に摂取することで、生まれてくる子供の発達障害が増えることも判明しているのです。はっきりとしているのは喫煙の影響です。タバコは、発達障害の要因であり、女性の喫煙はその意味でもきわめて危険な行為ということになります。また、父親が40歳以上の場合、自閉スペクトラム症の子供が生まれる確率は5.7倍も高まることもわかっています。ADHDについては、父親が45歳以上の場合は約13倍も高まることがわかっています。男性が高齢になるほど、精子の遺伝子の突然変異が多くなり、蓄積され、自閉スペクトラム症などの発達障害の発生に結び付くのではないかと考えられています。

良い環境を与えることで発達障害は改善する

環境要因として、発達障害の子供の脳機能を高めて症状を改善させるいくつかの習慣もわかってきているようです。たとえば、キャッチボールのようにボールを投げて受ける遊びは脳機能の向上を促す作用が大きいとされています。本格的なキャッチボールでなくても、幼児ができるような室内でのやわらかいボールやビーチボールのようなものでのボール遊びでキャッチボールをすることを習慣にすると効果があるといわれています。また、お箸を使って食事をすることも、脳機能を高めて、発達障害の症状の緩和に有益であると考えられています。幼児であっても、お箸を使うことは大事です。ボール遊びやお箸を使うことなら、家の中でどんな家庭でも実施できる訓練といえます。お箸を使う場合には、補助用のお箸ではなく、通常のお箸で訓練することが重要です。こうした日常生活での訓練は、できるだけ小学校中学年までに取り組んでおくことがのぞましいとされています。このほか、絵本の読み聞かせやペットの世話をさせることも脳機能の向上を促進するといわれています。

子供の脳機能を向上させるにはスマホやパソコンは有害

食事に関しても、米食を中心にした和食が症状の改善に最適であるとされています。小麦をできるだけ避け、米を主にすることが大切です。砂糖や甘味料の多い甘いジュース類、炭酸飲料などは、できるだけ飲ませないほうが良いです。カフェインも乳幼児の脳にはマイナス作用となるのでできるだけ避ける方が良いです。また、野外での集団の遊びをさせることは、発達障害や知的障害の傾向がある子には脳機能向上の大きな助けになることも重要です。反対にスマホやパソコンなどのデジタル機器は、できるだけ避けるようにすべきです。幼児期から小学校卒業までは、できるだけパソコンやスマホやタブレットには触れさせないようにすることが、発達障害の改善のために重要です。中学生であっても、パソコン画面を見る時間が長いほど読解力が低いという研究データもあるほど、有害なので、それよりも幼い子供にとっては、非常に危険なものといえます。

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