ADHDの児童を育てる時の注意点

東北地方のとある小学校での取り組みをご紹介します。この小学校に通う4年生の香織さんは、同じクラスにいる健太くんの問題行動で悩んでいました。健太くんは、ADHDの傾向があり、授業中に教室を歩いたり、授業中の不規則発言が多いなどの問題行動で、クラスメイトにしばしば迷惑をかけていました。

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衝動性から周囲に迷惑をかけてしまうADHD

健太くんは、衝動的にモノを投げつけるクセがあります。ある雪の日、学校帰りに、香織さんは、健太くんに大きな雪玉をいきなりぶつけられました。雪玉はドッジボールぐらいもあり、後頭部にぶつけられた香織さんは泣いてしまいました。香織さんの母親はこれを学校に相談しました。健太くんの保護者は、香織さんに謝罪に来ました。しかし、その後も健太くんの衝動性は改善することなく、香織さんのほかのクラスメイトも、モノをぶつけられたり、体当たりされたり、被害を受けたままでした。

学校に何度も相談することで事態が動く

ある時、教室の中で、担任の先生がちょっと教室から離れて別の仕事に関わった時間に、ふたたび、事件は起こりました。健太くんは、クラスメイトのほかの数名の男子と、手袋の投げつけ遊びを始めてしまったのです。そして、健太くんが投げつけた手袋が、香織さんの目にぶちあたりました。その後、担任の教師が教室に戻ると、目をおさえて泣いている香織さんの姿がありました。香織さんの両親はたいへん驚きました。また、心配しました。頭や目にモノをぶつけられることは極めて危険であり、取り返しのつかない怪我につながる可能性があります。もう、これ以上はだまってはいられないと感じた両親は校長先生との話し合いを持つことにしました。

学校ぐるみでADHDの児童を支援し見守る

話し合いの結果、事件はつねに、教師の目が届かない場所で発生しているという点に着目し、今後は、いかなる状況でも誰か教員が健太くんの視界の中にいるようにするとの対策が提案されました。担任がクラスから席を外す緊急事態の場合、隣のクラスの担任がしっかりと健太くんを観察しているようにし、教員の目が届くように学校ぐるみでの対策を講じるようになりました。そうすることで、衝動的にモノを投げる行為が未然に防げるようになり、問題行動が次第に減少していったのです。このようにADHDの児童は保護者や教員が常に監督している状況を作ることで衝動性が抑制され、自制心が働きやすくなることが多いです。できれば、学校への通学の途中でも保護者や教員の目が届く形を整えるのが理想です。ADHDの児童への指導は根気よく行う必要があり、声かけの工夫も学校全体で共有しなければなりません。単なる禁止の命令では、通じないことも多く、アドラー心理学などを踏まえた上手な導き方を教員も保護者も学ぶべきなのです。

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