子供を束縛したり支配したりすることが異常なレベルに及ぶような母親のことを毒親と呼ぶようです。医学用語ではありませんが、広く使われているようです。子供に対して共感的、受容的にかかわることができず、自分の価値観の押し付け、行動の束縛、子供への批判や非難などをコミュニケーションの常道としている親は、たしかに毒のような存在です。
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愛着障害の連鎖を断ち切る
毒親とされる親は、本人も愛着障害を抱えていることが多いようです。愛着障害だけではなく、それに伴うパーソナリティの偏りも強いことが多く、たとえば自己愛性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害などを抱えていることがあります。このような親に育てられると、子供は、適切な愛着関係を育てることができないので、子供もまた愛着障害を抱えるようになります。そして、もし、子供に自閉スペクトラム症の傾向があれば、その症状は、愛着障害が加わることで確実に悪化してしまいます。発達障害の問題をかかえる子ほど、親による適切なかかわり方が大事となります。子供を愛着障害にしないかかわり方を親が実践できないと、子供の発達障害はより悪化して問題が大きくなるのです。
愛着障害を避けることで発達障害も解決する
いわゆる発達障害、すなわち自閉スペクトラム症とは、発達のアンバランスであり、非定型発達であり、それは個性と呼ぶべきものにすぎません。しかし、もし、親が、子供に対して共感的、受容的にかかわることができず、子供への禁止命令を多発し、子供を束縛したり、あるいは、子供への強制命令を多発し、子供を支配しようとしていくなら、それは発達障害の子供が個性を伸ばして健全に育っていくことを強く妨げることになります。その意味でも毒親に育てられた発達障害の子はもっとも悲惨なケースとなります。本来よりも症状は悪化して、本来よりも改善が遅くなり、生きづらさを抱えていくことになるからです。
子供の改善の前にまず親が改めなければならない
子供に問題があるからと、医療機関をめぐったり、心理カウンセラーを頼ったりする親の中には、本人が毒親であり、まず自分が毒親をやめなければならないケースも多いのです。このような親は子供に対する適切なかかわり方を知りません。自分の親から適切に育てられなかったのですから、愛着障害を抱えていて、子供に対するときにも、この歪んだ愛着がマイナスに働いているのです。自閉スペクトラム症の子供をサポートするとき、親の問題がこのように重要です。親がパーソナリティ障害があって、子供に対して不適切な言動を繰り返しているなら、周囲の医師や看護師や心理相談員や教員が、いくら適切に子供にかかわっても、相殺されてしますのです。そのため親の状態をよく観察し、親に問題があることがむしろほとんどであると考えて、子供への適切なかかわり方を親に指導していくことが重要となります。ところが、問題のある親ほど、「自分は悪くない、子供を改めてくれ」と要求する傾向があります。このことが、発達障害の子供たちのサポートをしていくうえでの大きな障害となっているのです。