精神科医、岡田尊司氏の「死に至る病 あなたを蝕む愛着障害の脅威 (光文社新書)」によると「大人の発達障害(ADHD)」は、遺伝要因よりも愛着障害が原因で起こるものが非常に多く、愛着障害が大人の発達障害の症状を引き起こすということです。
子供と大人では大きく違うADHD
遺伝要因が関与するとされる子供のADHDは男性に多く、成長とともに改善してしまうことがわかっています。12才ぐらいまでに軽快することが多く、しかも男児に多いのが特徴です。ところが、大人のADHDには男女差はないのです。幼児期には顕著な問題はなく、ある程度、成長してから発達障害の自覚症状を持つものが多いのです。大人のADHDの多くが、幼児期に、母親とのあいだに安定した愛着形成ができない環境であることがわかっています。愛着障害を起こしうるような幼少時代を過ごしているのです。母親が育児放棄をしたり、あるいは精神疾患であったり、母親自身も愛着障害である場合も多いのです。これまでの医学界では、すべての発達障害は遺伝要因によるもので、養育環境は関係ないと主張されていました。発達障害は、親の育て方や愛情は無関係だと広く信じ込まれてきました。メディアに出る専門家は「親の育て方は発達障害と関係ない」「親の愛情不足で発達障害が起こるのではない」と説明していたのです。ところが、この定説が根底から覆る研究結果が出たのです。
愛着障害の症状としての大人のADHD
大人のADHDは、愛着障害の遅発性の症状として、発症しているということがわかってきたのです。大人のADHDの多くを大人の愛着障害が占めているというのです。時限爆弾のように遅れてスイッチが入り、大人の発達障害が発症することがわかってきました。「片付けができない」のは、発達障害ではなく、愛着障害かもしれないのです。「大人のADHD」は「愛着障害」を癒すことで治せる可能性があるということが判明してきたわけです。「愛着障害」は、時間はかかりますが、不安定な愛着を改善するための適切な取り組みで治癒させることは可能です。また、子供のADHDの場合も、周囲の大人がどのようにかかわるかによって、症状が重くなったり軽くなったりすることも明らかになっています。そのカギは、愛着障害を癒すかかわり方にあります。アスペルガー症候群の場合は、ADHDとは違いますが、それでも、周囲の人によるかかわり方は、症状の改善に有益となります。