発達障害を癒す愛着アプローチ

ADHDやアスペルガーに代表される広汎性発達障害、自閉症スペクトラム障害といった枠組みでとらえられる、いわゆる「発達障害」は、愛着アプローチという方法で生きる上でのさまざまな困難や苦悩からの回復が容易になることがわかってきています。

目次

愛着が不安定であるために発達障害の症状も悪化する

多くの発達障害は、愛着障害をも抱えていることがほとんどです。そのため、愛着障害を癒す心の安全基地としての機能を保護者やカウンセラーが十分に果たせば、メンタルは安定していくのです。変わることのない心の安全基地としての機能を親や心理療法家が提供できれば、そこを出発点として、本人が抱えている課題を克服していくことができます。すると、周囲の人との関係性も好転し、安定した人間関係を作り出せるようにもなるのです。親やカウンセラーとの愛着関係を心の安全基地として、愛着を安定化させることができれば、そこからその人らしい良い人生を作り出せるということです。これが「愛着アプローチ」なのです。

リフレクティブ・ファンクションが高まると愛着が安定化する

親の虐待や死別などの恵まれない境遇に育ったにもかかわらず、愛着が安定して、人生を立て直し、幸せに生きている人も一定の割合で存在しています。それらの人に特徴的なことは、恵まれない境遇にもかかわらず愛着が安定していることです。なぜ、彼らの愛着は試練に歪められずに安定化できたのでしょうか。それは、それらの人のリフレクティブ・ファンクションが高かったからだということがわかっています。リフレクティブ・ファンクションというのは、「振り返る力」と訳されています。自分の状況を客観視しながら振り返ることができたり、相手の立場に立って考えたりすることができる能力のことを指しています。不安定な愛着の人が、心理療法を受けて、安定型の愛着へと成長していくとき、このリフレクティブ・ファンクションが高まっていくことが知られています。つまり、この機能を高める取り組みをすれば、発達障害のかかえる愛着の問題は解消できる可能性が高いのです。

愛着アプローチは視点を広げ自己を統御する力を高める

振り返りによって自分を客観視する取り組みや、日記などで振り返りながら記録する取り組みは、愛着の安定化をもたらすための良い訓練となります。こうした知識のあるカウンセラーや心理療法家が安全基地を提供することで愛着の安定化が促進されますが、親やパートナーもまた、本人のそばにあって、本来の安全基地としての機能を高めるかかわり方をすることが大切となります。そうしながら、本人が、自分の持つ振り返る力を鍛えて、共感力を鍛えて、物事を多角的に観察できるような訓練をしていくことが大切です。一つの視点だけで物事を見てしまうことがなくなるようにトレーニングを重ねるのです。
この本を読めば、今すぐにも実践できるようになるでしょう。

愛着アプローチ 医学モデルを超える新しい回復法 [ 岡田 尊司 ]

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